2006年09月08日

●初めて本を売ったとき

1、文章を書いて、本にしてもらって、お金をもらう
  という仕事をここ10年くらいやっているんだけど、
  30年近く前に、本を売ったことがあります。
  たぶん、9歳とか10歳ぐらい。

2、商店街の祭の夜。たぶん七夕祭。
  実家がパン屋だったから、
  お店の前にレジャーシートを敷いて、
  隣の呉服屋のお姉さんと一緒に、読み終わった本を並べました。

3、なんでそんなことしようと思ったんだろう。
  あんまり思い出せない。
  でも、まあ、きっと、
  大人のマネゴトがしたかったんだと思います。
  商店街のお祭りは、露店もいっぱい出ていたし。
 「あんな風に売ってもいいんだ」と、憧れたのかもしれない。

4、商品にしたのは、絵本とか伝記とか。
  マンガは「まだ読むかもしれないから」売れません。
  通りがかったおばさんが、
  「良寛さま」の伝記を手に取って僕に聞いた。
  「これ、いくら?」

5、「えーと」
  僕はパニックになった。今でもはっきり覚えている。
  「そこに書いてある値段・・・」
  「もう少し安くならない?」
  「うーんと」
  採算ラインも、目的もへったくれもない商売だから、
  いくらだなんて決められません。相場なんて知らないし。

6、たぶん、7カケとか、半額くらいと僕は言ったと思う。
  でもおばさんは納得しなかった。
  最終的には100円になった。
  交渉というより、ただ押し切られただけ。

7、それを見ていた別のおじさんが、
  同じように100円を置いて、「野口英世」を持って行く。
  僕の露店本屋は、
  知らないうちに「全品100円」ということになっていた。
  あっという間に全部売れちゃったんだけど、
  ものすごくものすごく悔しかったのを覚えています。

8、「理不尽」という言葉はまだ知らなかったけど、
  そんなような怒りの感情がわきあがってきた。
  でも、あんまり両親には相手にしてもらえませんでした。
  笑って見ているだけ。

9、原稿料とか印税をもらうようになった今、
  割のいい仕事も、安いギャラの依頼も色々あるんだけど、
  ああいう悔しさはあんまり感じない。
  「大人になったのかしらん」と思ったり、
  「生活できるんだから、これで適正なのかもね」と思ったり。

10、でも、いつか、またあんな風に怒ってみたいな、とは思うのです。
  「オレの原稿が、この価格とはなにごとぞ!」とかさ。
  今は、あんまり想像つかないけども、
  機会があったら、やってみたい。無理かな。無理だな。

  

Posted by tekigi1969 at 2006年09月08日 16:22
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コメント

ちぃっす
幼稚園の時、模擬店ごっこみたいなことをしたことを覚えています。
ピンクの毛糸を皿に盛ってスパゲッティナポリタンと偽って、
代金の代わりにチケットをもらうというお遊戯だったのに、
勝手に赤い折紙をウインナー代わりにして、
そこまでサービスしなくてよし!
と怒られたような記憶があります。
ちょっと違うけど、サービスしてなんぼってあるような気がするんですよねぇ
あちきのサービスにケチつけるとは! 
ナンタルチア!サンタルチア!!と思ったものです

Posted by kei at 2006年09月09日 00:38

いやん。なにこれ。
この記事めちゃめちゃかわいい。
家の人も友達が「クワガタ屋」をお祭りで売ってたらしくて商店街の子はさすがに違うなぁと思いました。

Posted by さとみん at 2006年09月09日 21:57

>keiくん
 あ、そうか、模擬店っていう言葉あったね。
 ままごとでも
 サービスしなくちゃあかん!
 と思ってしまったのは、
 きっと自営業の家に生まれたせいだと思うなあ。

>さとみんっち
 なぜに、ギャル風おどろき?
 商店街の子は、
 商売が身近にあるから、
 遊びも独特になっていたのかもしれないねえ。
 

Posted by 適宜更新 at 2006年09月12日 16:58
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