2006年11月14日

●うんこ味のカレー

酔っぱらうとついつい、本音とか本性、ナイショ話とかいろんなモノが出てしまうけど、なんだか分からないものも出ることがあります。出る、というか、もれる感じ。

お酒を飲んでいたのは十数人。「うんこ味のカレー」と「カレー味のうんこ」どっちなら食べられるか。この話題になりました。とりあえずは前者だという答えが多い。だけど、話しているうちに、後者が増える。よくあるパターンで、「見かけも味も完全にカレーならば」という前提が問題になる。このテーマだとこういう展開になることが多いです。厳密に追求していけば「見かけも味も完全にカレー」であることと「ほんとうのカレー」の違いとは何か、だとか、「カレーであることは何によって証明されるのか」とか、そんな風に広がって、「カレーとは」に行き着くのかもしれないけど、みんな酔ってるからんなことにはなりません。ぐだぐだっと、そんなようなことを思いつつも、すぐに忘れて、だらだらっと次の話にうつっていく。はずでした。

ところがこの時は違いました。「お前らはおかしい」一人の先輩が怒り出したからです。彼は大きな声でいいました。「カレー味でもな、これは、うんこなんだぞ」びっくりしました。「これ」という言い方にも驚きました。先輩はまるでそこにカレー味のうんこがあるかのように話していたんです。誰かが軽く「でも、そっくりだったら、味がカレーの方がいいよ。うんこ味はやっぱ食えないじゃん」でも先輩は譲りません。「いいや、ダメだ」とさらに声を荒げて「うんこは食えない。食い物じゃない。お前らにも食べさせたくない」とまで言い切ったのです。「食べるな」。宣告でした。ああこのひとはマジに言っているんだな、と僕らにもようやく理解できました。ようするに酔っている。

「食べるなといわれてもなあ」みな半笑い。でも酔った先輩は当然だという表情。「うんこを楽しそうに食ってるお前らを見ていられないんだ」「食べたいって言ってるわけじゃないってば」と反論を試みても「同じことだ」「怒ってるんすか?」「そりゃ、そうだ。オレが一人でカレーを食べているときに、まわりが全員うんこをほおばっていたら、腹もたつだろう」正確にはうんこ味のカレー派は他にも2、3人いたんだけど、彼のなかでは一人ぼっちになっていたみたい。

おもしろいもので、こういう状況になると、突然寝返るひとが現れます。「そういわれてみると、やっぱりうんこは嫌だな」。でも、この流れは伝播しません。状況は変わらず、先輩もとくに興味を示しません。なぜかというと、そういう問題じゃないからです。先輩はどろんどろんに酔っていて、何かのこだわりがダダ漏れになっているだけだからです。ただ「うんこは食いたくない」といわずにはおられないだけで、誰かを説得したいわけではない。たぶん、だけど。

さんざん主張した末に先輩はついに寝息を立て始めました。「いいか、オレが寝ているあいだに勝手にうんこ食うんじゃないぞ」と言い残して。うんこに対する感覚は幼少期の体験が影響すると聞いたことがあるけど、何があったんだろう。でも、なんだか触れてはいけないものっぽい。古いSF小説に出てくる未開の星みたいなものなんだと思います。静かになった酒宴の場で、どうしていいか困った僕らは「なんというか、後輩思いなんだよね、きっと」「うんうん」「まあそうだね」「いいひとなんだよ」「そうそう」。とかなんとか、ずいぶん乱暴な解釈をして、再び飲み始めたのでした。酔った時にもれるナニカにこだわるのは、面倒くさいという意見だけは、全員一致していたみたい。

ウンコな議論
ウンコな議論
posted with 簡単リンクくん at 2006.11.14
ハリー・G.フランクファート著 / 山形 浩生訳 解説
筑摩書房 (2006.1)
通常24時間以内に発送します。


Posted by tekiteki at 2006年11月14日 11:30
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コメント

ナハハハハ、こういうネタに反応するのは嫁入り前の身としてどうかと思いますが、この話、本当に面白いなあ。引き込まれてしまった。
ちょっと披露したいネタもありますが、公の場ではやめておこう。

ついでに、このハリーなんとかさんの著書も今朝FM東京で紹介してました。

Posted by aya at 2006年11月14日 13:09

>ayaさん
 楽しんでもらえて良かったっす。
 披露したいネタ、気になるなあ。
 今度ぜひっ。

Posted by 適宜更新 at 2006年11月15日 08:39
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