2008年01月11日

●月本裕さんの訃報

1、朝起きて、作家・月本裕さんの訃報を知りました。
  最初はtwitter経由だったので、「まさか」と思って新聞を確認。
  本当でした。享年47歳とのこと。 (→記事

2、お会いしたのは数回でしたが、すごく優しい方でした。
  月本さんのBLOG「ツキモトユタカ ノ マイニチ」 で、
 「アホウドリの糞でできた国」を面白いといってくださったのがきっかけです。
  その縁で、お会いして、ソトコトの小黒編集長や坂本龍一さんを紹介してもらったり、
  ソトコトのバーでDJをやらせてもらったりしました。
  当時の月本さんは、作家、編集者、テレビ番組ブレーンであると同時に、
  ソトコトの顧問、という立場でもありました。
  それなのに、お忙しいなか、
  わざわざぼくのイベントに顔を出してくださったこともありました。

 

3、月本さんに、
  「雑誌をつくるのは、何もない荒野に旗をたてるようなもの」という話を聞いたことがあります。
  例えば、ソトコト。
  これは、まだ環境問題がジャーナリスティックなテーマだった時代に
  あえて「エコ」という旗を立てて、創刊した月刊誌でした。

4、雑誌は売れるだけでなく、広告が取れなくては採算が採れません
  ようするに、読者と、広告を出す企業、どっちにとっても魅力的でなくてはいけない。
  ソトコトが掲げた「エコ」「ロハス」の旗は、その両方を満たしていたんだと思います。
  その旗にいろんなひと・モノ・お金が集まって、雑誌が盛り上がって、
  エコブームともいえる状況まで生まれちゃいました。
  雑誌に限らず、この「旗をたてる」という考え方は
  これから、いろんな場面でつかえそうなイメージだなあ、と思っています。

5、もうひとつ、覚えていることがあります。
  沖縄料理屋さんで「ロハス」について話したときのことです。
  酔っ払ったぼくは
  「この言葉のおかげで企業や社会を巻き込むことはできたけれでも、
   このままだと、ダサいというか恥ずかしい言葉になるんじゃないですか」
  と、かなり失礼なことを言ったのでした。

6、ところが、月本さんはそれを否定しませんでした。
  笑って、うなずいて、色々なアイデアを話してくれたのです。
  それはけっこう破天荒なモノまで含んだ内容で、
  ただ「ダサくなりそう」なんて思ってただけの自分はびっくりしました。
  これまで盛り上げてきた「ロハス」という言葉を
  さらにさらに拡張して、
  もしかしたら、自己解体しちゃうんじゃないかくらいのことを話してくださったのです。

7、これは3年ぐらい前の出来事だけど、
  ぼくにとってはものすごく大きな刺激になりました。
  本を作ったり、何かを始めたりするときの、
  大切なヒントをもらったような気がしています。

8、最後に、もうひとつだけ思い出を。
  80年代のころのニューアカブームの話をしていて、
  ぼくの高校生時代の愛読書「鉄の処女」(栗本慎一郎)は、
  若き日の月本さんが、編集に携わっていたのだと教えてもらいました。
  この本はゴシップ雑誌みたいなノリで哲学を解説していて、
  大好きだったのです。

9、10代の自分に影響を与えた本に関わった方に お会いするのって、
  レプリカントがプログラマーに会うみたいなものだと思う。
  そういうひとに「いい本を作りましたね」といわれたのは
  大きな自信になりました。

10、今年に入ってもさまざまな仕事を手がけておられただけに
  いきなりの訃報に、まだ驚いています。
  ご冥福をお祈りいたします。
  本当にありがとうございました。

 

Posted by tekigi1969 at 2008年01月11日 12:44
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