2009年04月08日

●明日から第67期名人戦七番勝負です

1、口内炎が痛いっす。
  野菜をたらふく食いたい。
  それはさておき。

2、明日から将棋の名人戦がはじまります。
  指さない(弱いといってもいい)将棋ファンとしての
  名人戦観戦の楽しみは、
  なんといっても、BS2で断続的に生中継があることじゃないでしょか。
  これはネット中継とか、
  ダイジェストでは見られない部分が楽しめるんです。それは間合い。

3、以前、将棋の本をつくっているときに
  お話を聞いた某プロ棋士は
  「対局をしているときは、
  相手との間合いがすごく重要」といっていた。
  相手の表情やしぐさで、様子を探る。次に指す手を決める。
  ほおっと息を抜いたときや、視線を動かすとき、
  どのタイミングで指すかでインパクトは違う。将棋は変わる。

4、平成3年に亡くなった
  カッコいい無頼派棋士・升田幸三実力制第4代名人は
  著書「王手」で、こんな風に書いている。
  ちょっと長いけど、どくとくな語り口と、
  兵隊時代の逸話も含めてすごくおもしろいので、
  以下、引用します。

5、「だいたい私は、銃剣術を昼やるのはいやでね。
  というのは、剣道とか、ああいう武道的なものは、
  弱いうちは剣先とか槍先ばかり見ていますが、
  上手になると、相手の目を見てやるものなんです。
  そして相手の目が動いたときに踏み込んで、一本とる。
  だから剣道の名人は、斬られても目を動かさんといわれておるくらいで、
  それほど目は大事なんです

6、(続き)
  ところが、こっちは弱いから、何とかしようと思うと、すぐ目が動く。
  昼間だと、面をつけておっても明るいから、
  それがすぐ相手に分かってしまうわけだ。
  しかし朝早くか夕方だと、面の中は暗いですから目の動きに気づかれることがない。
  こっちも見えんが、向こうも見えんわけで、
  早朝なんかだと霧が深かったりして、なお都合がいいわけです。
  それともう一つ、相手が息を吐きますね。
  すると、昼なら見えんが、肌寒くなった時分の早朝なら、吐く息の白いのが見える。

7、(続き)
  そこに私の工夫があったわけで、いろいろやってみると、
  相手が息を吸ったときはとても一本とるわけにはゆかんが、
  つぎに息を吐きますね。ハーァと白いものを出して。
  このときにさっと突きだすと、かならずきまるんです。
  これは人間の本能的な生理なんですね。
  息を吸うときいうのは、所作が早いんです。しかし吐くときは力が弱る。

8、(中略)
  兵隊から帰ってまもなく、木村(義雄14世名人)さんと指した
  五番将棋の三局目だったナ。
  いまはなくなりましたが、
  そのころ「新大阪」という横型の面白い新聞があって、そこの主催でね。
  あの将棋は、終盤ギリギリのところで、ぼくは一手えらいことをして、
  苦戦も苦戦、大汗をかいとったんだ。

9、(続き)
  それで木村さんは、優勢に立ったんですが、
  向こうも、もう持ち時間がないわけだ。心臓が早鐘を打ってます。
  それが、木村さんタバコすうとるから、吐く息、吸う息でよく分かる。
  こっちも必死ですからね、その呼吸の間をはかって、
  息を吐こうとした瞬間に、バシッと駒を打つ。
  すると木村さん、ハッとするわけだ。

10、(続き)
  人間、息を吸うときは、無意識のうちに全身を緊張させますが、
  吐くときは逆に弛緩する。
  その虚をつくと、動揺が大きいんです。
  それを繰り返したもんですから、しだいに木村さんも思考が乱れてきて、
  あわてて次の手を指す。そして、ついに、最後の土壇場というところで、
  こんどは木村さんに間違い手がでた。それで逆転したわけです。

11、(続き)
  これ、相手に時間の余裕があったらダメです。
  しばらく盤を眺めて、落ち着きをとりもどしますから。
  一秒二秒が貴重なときでしたから、それが木村さんにわざわいしたんでしょう。
  けれどもそんなところを狙われて、やられたとは思わないから、
  「きみの闘志にやられた」とか言ってましたが、
  まぁ闘志は闘志だけど、いろいろあるからねえ、闘志にも。」

12、引用終わり。将棋の動画中継は
  「動きが少ないからつまらない」と言われることもあるけど、
   この辺をイシキして見ると、
   ネット中継とはぜんぜん違う楽しみ方ができると思います。

13、毎週日曜にやってるNHKの早指し将棋でも
  「羽生名人は、呼吸の間合いをイシキしてるんじゃないか」と思える節があるし、
  考慮時間が長い名人戦でも、
  相手がどんな動きをしているときに指したか、とか
  席をはずすのはどんなタイミングなのか、とか
  1分将棋になったときの両者の呼吸なんかに注目すると
  「バガボンド」読んでるみたいな気分になれるのです。
  「カロリーメイトらしきモノを食べてたら、相手が投了した(負けを宣言すること)」
  なんてちょっとマヌケなシーンも、以前見たことあるんだけど、
  すごく印象に残ってます。これはやっぱり映像のチカラだと思う。

14、ちなみに
  引用した升田さんのお話は、ホントかどうかよく分かりません。
  デキスギのような気もするし、ここまで上手くいくモノかなあ
  なんて、ちょっと怪しい気もする。でも、こうであって欲しい気持ちもあるのでした。
  しかも、このあと
  夜這いの名人はこの辺の呼吸の間合いが上手いとか、
  すげえ方向に展開していくのですが、
  そのへんの続きもぜひ「王手」(中公文庫)で読んでくださいませ。

15、カンケーないけど、
  名人戦第1局の9日、10日はどっちも取材。
  だから、見られないのでした。くう。
  もしチャンスのある方は、ちょっとでも興味が向いたら
  一度ためしに見てみて下さい。

 

Posted by tekigi1969 at 2009年04月08日 17:52
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://tekigi.hiho.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/1782

コメント

そんな大事な真剣勝負の場で残念でしたね.
やっぱり名人戦は長いのがいいですね!

Posted by 佐藤R at 2009年04月10日 23:59

>佐藤Rさん
 今回は羽生さん対郷田さんですから
 すごくじっくりした、ちょっとした均衡のブレがいきなり勝敗に反映するような
 プロっぽい名人戦になりそうです。
 第1局は見れませんでしたが
 今後はできる限りチェックする所存です。

Posted by ふるた(適宜更新) at 2009年04月12日 18:55
コメントしてください




保存しますか?